安全な農業に向けて――農作業中の事故を防ぐためには?
“気配り”と“昔ながらの知恵”が熱中症を防ぐ
広島市西区で、野菜を少量多品目栽培している「かじやま農園」の鍜治山直樹さん。長年専業農家でやってこられたご両親と共に、働いています。農作業中の事故防止のために、気を付けていることを聞いてみました。
屋外やビニールハウス等での作業となる農業では、夏場は十分な熱中症対策が望まれます。鍜治山さんは熱中症予防として、作業時の小まめな水分と塩分補給・通気性のよい長袖服の着用・早朝時間帯での作業などで、対策を取っています。加えて、欠かさず行っているのが、毎朝作業前に家族で行う「体調確認」です。体調管理には、十分すぎることはありません。自己判断に頼らず、お互いに“気を配り合う”ことを大切にされています。
それでも、ついつい作業に集中してしまい、軽い熱中症になったこともあったとか……。その時は、即効性のある「塩飴」をなめることで、症状が改善したそうです。
また、塩分補給には疲労回復の効果もある「梅干し」もお勧め。鍜治山さんは自家製の梅干しで、夏を乗り切っているそうです。
そして、鍜治山さんが愛用するのは昔ながらの「麦わら帽子」です。通気性がよく、日光を幅広く遮断するので、夏場には最適な帽子となります。
“梅干しに麦わら帽子”――「昔から使われ続けてきたものは、理にかなっているな」と、鍜治山さんは改めて感じています。
“多めの確認”と“体調管理”が農業機械の事故を防ぐ
以前、農業機械関係の企業で働いていたこともある鍜治山さんは、事故にならないように、農機具の使い方に人一倍気を付けています。
例えば、トラクター走行の際は、「片ブレーキ」と言って、ビニールハウスなどの狭所での旋回時、片側のタイヤだけブレーキをかけることがありますが、ターン後すぐにブレーキを戻すよう、習慣づけることを励行しています。
また、トラクターの斜面走行については、天候や取り付けている作業機によっても安全な勾配は異なるので、その時の状況に応じて、判断をしていくことが大切です。
疲れていると判断ミスをしてしまうので、“体調管理”にも気を付けることが必要でしょう。
そして、専業農家のご両親から、「注意は多いくらいでいい」と言われて育った鍜治山さんは、農業機械を扱うときも“多めの確認”を心掛け、「慣れたころが危ない」と肝に命じて作業しているそうです。
命を守るための心構え
「農業は、デスクでの仕事とは違います。自然相手の農業は、いつ事故が起きてもおかしくない仕事だと認識してほしい……」と鍜治山さんは語ります。
しかし、自分自身が実際危険にさらされたり、近くの人が事故にあったりしてから、「気をつけなきゃ」と思う人が多いのが現実です。
安全な農業に向けて、熱中症にしても農業機械の事故にしても、“命を守るための心構え”が大切です。そう思うことで、ひとつひとつの作業が丁寧になり、十分な予防策が取れれば、事故の未然防止につながっていくことでしょう。