農家ではたらく前に知っておきたい、果物農家の一年

梨農家の一年



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鳥取の梨農家「まえた農園」の前田真也さんに一年の仕事の流れについて伺いました。
4月の初旬、梨農家の一年は“花粉つけ”から始まります。梨は、同じ種類の花粉では結実しないので、手作業で別の品種の花粉を受粉していきます。実がつく5月は“摘果”の作業です。梨は一カ所に8個の実がなります。実を大きく育てていくために、7個の実を間引き1個を残します。さらに枝1mに対して20センチ間隔になるように間引いていきます。5月下旬から7月にかけては“袋かけ”の時期になります。病虫害や傷から梨の実を守るために、ひとつひとつ袋をかけていきます。こうして大事に育てていくこと約4ヶ月間、8月お盆を過ぎるといよいよ収穫となります。「20世紀梨」から始まり、さまざまな品種の梨の収穫が11月下旬頃まで続きます。そして、収穫が終わると “剪定”が行われます。余分な枝を切り落とし、また美味しい梨を実らせる準備をするのです。

梨の実を守る 袋かけ



まえた農園ではさまざまな品種の梨を生産していますが、300本ほどある梨の木の7割が「20世紀」です。この品種は、“袋かけ”を2回行います。1回目は、5月下旬に8センチほどの「小袋」をひとつひとつの実にかけます。それから20日ほど経つと、実が大きくなり袋が破れてしまうので、この時、2回目の袋かけで「大袋」をかけます。――この地道な作業が、デリケートで肌が弱く、病虫害にかかりやすい「20世紀」には、必要なものだそうです。「幸水」や「豊水」に代表される赤梨は、比較的丈夫なので、袋かけは「大袋」を1回かけることで実を守ります。

おいしい梨は“剪定”作業が決め手



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剪定作業は、収穫の終わった12月から3月まで続きます。
梨づくりは剪定に始まり剪定に終わると言われるように「一番重要な作業は剪定かもしれませんね」と前田さんは言います。樹形を整えながら、実つきのよい枝を選んでいく作業はパズルをするようで、前年の剪定の反省をもとに行われるので、経験が必要とされます。また、剪定と同時にされるのが、果樹棚に枝を結び付ける棚付け作業。これは、棚付けをして枝が上へ伸びるのを防ぎ、日当りを確保したり台風などで落果するのを防いだりします。
「剪定の工程で梨の出来が決まる」と言っても過言ではないようです。

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秋の味覚の代表――口の中に、ジュワーとおいしい果汁が広がる梨。
農家の方の、一年間の手間を惜しまない地道な作業と、経験を生かした工夫から生まれる、まさに賜り物なんですね。