農作業、安全にはたらくために知っておきたいこと

農作業事故は「慣れと油断」



毎年、農作業中に多くの事故が発生しています。草刈機で足の指を切る、摘果の際に脚立から落下し骨折、熊に襲われ負傷する、暑熱環境下での熱中症など、さまざま状況で事故は発生します。また、トラクターの転倒や作業舎の屋根からの転落、熱中症などの事故によって、命を落とすケースも少なくありません。
「自分は大丈夫」とつい他人事のように思ってしまいますが、慣れや油断から事故は起こります。日頃から十分に安全対策を行うことが必要です。

他人事ではない農作業事故



一般社団法人日本農村医学会の発表によると、全国での農業事故の発生件数は、年間約45,000件以上と言われています。また、農作業事故死亡件数は、毎年400件前後発生していることから、全国で「毎日、農業事故で1人亡くなっている」という計算になるので、とても他人事ではありません。
平成25年には、全国で農業死亡事故が350件発生しています。その内訳では「トラクター・耕耘機などの農業機械での事故が約65%、熱中症等のそれ以外の事故が約31%、作業舎の屋根からの転落など農業施設での事故が約3%」という農林水産省からの調査結果が出ています。

安全のために気をつけたい“確認”と“予防”



トラクター-min

農業機械による事故で最も多いのが、トラクターの使用中に起こっています。トラクターは、変速が何段階もあり非常に複雑で、高度な運転技術と判断が求められる農業機械です。デコボコな道や狭い道、気候条件によって変化する悪路など、悪条件の中での走行となることも多いので、事前に危険箇所の確認や慎重な判断をすることが、事故防止のために必要不可欠です。
また、トラクターは、ロータリーや播種機などの作業機を取替えてさまざまな用途に使う多機能機です。作業機の交換時にも事故が起こっているので、交換方法を熟知しておくことも大切です。トラクターの乗降の際には、足場を確認することを忘れないようにしましょう。機械作業は一歩間違えると重大な事故につながります。「大丈夫」と楽観視せずに、安全のための“ひと手間”を心掛けることが事故防止につながります。

農家で働く

気温の高い7月および8月に、特に気をつけたいのが熱中症です。農作業中の熱中症事故は毎年発生しており、平成25年度は 24件の死亡事故が報告されています。(農林水産省調査)熱中症予防のために、作業中の小まめな水分・塩分補給や休憩はもちろんのこと、日中の気温の高い時間帯を避けて作業を行い、汗の発散がしやすく熱中症になりにくい服装をするなど、基本的なことに気を付けたいですね。さらに、作業当日だけでなく日頃からの体調管理や、2人以上で作業し周囲で互いに気を配り合うことなど、合わせて気を付けていくことで、悲しい事故を起こすこと無く、農作業に取り組めることでしょう。


【参考資料】
1)『こうして起こった農作業事故Ⅳ〜農作業事故の対面調査 4年間の総括〜』
一般社団法人日本農村医学会(平成27年3月)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_kikaika/anzen/23taimen.html
2)『平成25年に発生した農作業死亡事故の概要』農林水産省
yhttp://www.maff.go.jp/j/press/seisan/sien/150415.html
3)『農作業中の熱中症に対する指導の徹底について(平成27年度通知文)』農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_kikaika/anzen/pdf/2015.pdf
4)『農作業中の熱中症に対する指導の徹底について』農林水産省
http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/ic_rma/2501/ref03_4.pdf