農地選びに必要な広い視野とお互いさまの関係

農家で働く上で欠かせない農地選びの心構え



「農地選び」と一口にいいますが、実際には多角的な観点から考えならなくてはいけません。初めて農地を選ぶ際には、農地にはさまざまな違いがあることを知った上で、自分のやりたい農業に合う場所を選んでいきたいものです。土壌の違い(火山灰土・砂地・粘土質など)や気候(気温・日当り・降雨・降雪・風の強さなど)によっては、作物の種類や農法などが異なってきてしまいます。

また、水の便や排水性、小屋を建てられるか、自宅からの距離、といったことも考えていく必要があります。他にも、どんなことを心構えとして持っておくと良いのかを、3年前に農業を始められた内藤さんに、今までの経験をもとに話していただきました。

内藤ファームに学ぶ新規就農の農地選び

周りの環境にも目を向ける



「周りに通常の基準の農薬を使って栽培している農家が多ければ、無農薬栽培は難しいですね。農薬を使わないことで病虫害が発生し、被害が周りに広がれば逆に、周りの農家に迷惑をかけてしまうことになります」
と、内藤さんは言います。

また、内藤さんが研修した蔵王は、温泉施設やレジャー施設、宿泊施設を兼ね備えた東北を代表する観光地です。そこでは、果物狩りや大根などの収穫体験を行う「観光農園」としての農業が、成り立っていました。それを参考に山元町でも農業体験を企画しましたが、観光資源が乏しく集客方法に工夫が必要でした。

“縁”のある土地から生まれた“お互いさま”



農家さんに学ぶ農地選び

宮城県の太平洋沿岸に位置する山元町で農業を営む内藤さんは、東日本大震災の2年後、2013年に埼玉より居を移し、新規就農しました。津波被害が大きく、今なお津波被害の爪痕を大きく残す山元町で、もともと震災ボランティアをしていた内藤さんは、地元の方の温かい人柄にふれ、土地に愛着を感じていました。そして、復興支援に関わっていく中で「山元町の復興には、若い人の力が必要だ」と強く感じ、自ら山元町に移住することを決意しました。

そんな内藤さんは、今でも町おこしのイベントに、参加しています。また、地域の草刈りには欠かさず行き、「人とのつながり」を大切にしています。そして、地元の方と“お互いさま”の関係を築くことで、農業をしていく中でも助け合うことが多くなったそうです。
雪で建物が潰れたときには、内藤さんが震災ボランティアの仲間を誘って手伝いに駆けつけたり、用事で家を空ける農家さんがいれば留守中の畑の管理を買って出たりしています。一方で、地元の人たちは、内藤さんの持っていない農業機械を貸して下さる…そんな関係ができていったそうです。
震災ボランティアの“縁”で移り住んだ土地で、始めた農業。作物とともに人との“つながり”も大切に育むことで、お互いの援農関係が生まれてくるようです。

農地を選ぶためには、土質や気候など“土地の性質”を知ることも大切ですが、その地域でとれる農作物や、そこで農業をしている農家の方たちの様子などを知ることも大切です。そして、現地を体験したり、地域の人々と関わったりしながら、その地域で“農業をしている自分”をイメージしながら選んでいきたいですね。