農家で働くときに知っておきたい農地の個性とは

農地は農地でもいろんな個性がある



一口に“農地”と言っても、いろいろな農地があります。
縁のある土地で選んでもよし、さまざまな土地を見た上で決定してもよし。
初めて農地選びをする際には、農地の特徴や地域の特性を知り、「作りたい野菜と土地が合うかどうか、自分のやりたい農業ができるかどうか」を考えた上で、選んでいくことが大切です。

宮城県の東南端、太平洋沿岸に位置する山元町に新規就農した内藤さんに、農地選びについてうかがってみました。

「ニンニクを作りたい!」から始まった農地の選び方

内藤ファーム

内藤さんは、東京都や埼玉県で営業の仕事をしていましたが、山元町で震災ボランティアの活動をしていたことがきっかけで、山元町で農業を始めました。「山元町の人を元気にしたい!」そんな思いで、元気が出る作物―ニンニクを作ることを決めていたので、初めての農地選びの基準は「ニンニクの栽培に適していること」でした。山元町内では山側の粘土質の土地よりも、海側の砂地の土地の方が作ろうとするニンニクに適しています。そこで、海側の農地で、自宅から近く、地下水を利用できる農地を選びました。

土質だけで選んではいけない農地



初めて選んだ農地で実際に農業をしてみて、内藤さんは「農地選びには、土質以外にも目を向けなければならない」ことに気がついていきました。
年間を通して強い風の吹く内藤さんの畑では、野菜に傷がつくことを避けられません。土壌の違いだけでなく、気温や日照、降雨・降雪、風の強さなどの気候条件によって、作物の育ち具合や必要な設備も異なります。「水が利用できることも大切ですが、排水性が高いことも重要です。今年の豪雨では畑が海のようになりましたからね」とも、内藤さんは語ってくれました。獣害も場所によって違います。内藤さんの畑では、ネズミやハクビシン、カラスなどの獣害がありますが、山に近いとイノシシの被害もあります

農地選びは地域の特性を知ることが大事



内藤さんは農業を始めるにあたり、蔵王で研修を受けました。
「研修で習ったことは、同じ地域であれば活かせる」と思っていましたが、習ったことが通用しないこともありました。山の蔵王――土質は柔らかい火山灰土です。標高が高いので、1日の寒暖の差が大きく作物に甘みがのりやすく、降水量も多いので水やりの頻度は少なくてすみます。海側の山元町――土質は砂地で固まりやすいです。温暖で1日の寒暖の差は少なく、降水量も少ないです。気温は安定しているので作物を育てやすい環境です。このような違いから、肥料の施し方、水やりの頻度などの違いがあることに、後から気付いたそうです。

初めての農地選びでは、まず、「どんな農業をやりたいか」、「何を作りたいか」を具体的にイメージした上で、“土質や地域”の特性を見比べながら選んでいくことが大切だと、改めて気づかされました。

農地の選び方