野菜をつくること、それは農家としてはたらく想いの積み重ね

柳川貴嗣/東京都青梅市

生産者として働くこと



なぜ彼は農業を志し、農業に希望を持ち有機農業を極めようとしているのか?
――東京都青梅市で新規就農して5年目のヤナガワファーム柳川貴嗣さん。
柳川さんが何をめざして農業をしているのかもっと根本を知っていただき、食の恵みとは?自然の恵みとは?、さらには“社会”全体のことまで、皆さんに考えてほしいと考えて、彼の農業への想いを伺いました。彼の思いを感じてみてください。農家さんって、本当にいろいろなことを考えてるんです!

柳川さんのめざす循環型社会(農業)とは?



柳川さんが考える有機農業とは「土から生まれたものは土に還るという地球上の原理・原則のサイクルの中に、人間の産業である農業を組み込んだもの」をいいます。これは循環型社会の定義とほぼ同じことです。紙やペットボトル、工業製品などの「物」などはリサイクルという形で、循環型社会へのアプローチがしやすいのですが、農業になるとハードルが上がります。なぜなら、現代人は化学合成された薬を飲むため、その糞尿を堆肥化して畑にまくと畑の中に残ってしまい、野菜がそれを吸収する恐れがあるからです。

では、現代で可能な循環はどのようなものになるのでしょうか?柳川さんは、その可能性が「生ごみ」にあると考えています。人が生活する限り、必ず生ごみは出ます。キチンと分別された生ごみを堆肥にすることで、半永久的に野菜を生産することが可能なのです。

柳川ファーム

このような想いを持って、柳川さんは循環型社会の実現を目指されています。東京都で最大の農地がある青梅市がご実家だったこと、土質が良かったことが青梅市という土地を選ばれた理由です。この地で、東京都の個人経営の農家としては2件しかない有機農家になったのは、先にもあげた「循環型社会の実現」のためです。

――地元から出る有機物にこだわり、近隣の養鶏場や牧場から出る堆肥などを用いて土をつくる
――上記肥料を基に麦などの緑肥を育て、それを再び肥料として土に戻すことで地力をつけ、野菜を育てる最高の状態へ持っていく
――その土で自然の力を活かした栄養満点の有機野菜を育てる

この流れの中に、人間が出した生ごみを肥料にして野菜を育て、そしてその野菜を販売する仕組みを作りたいと熱く語られます。現実には、家庭で出る生ごみを肥料にして花の肥料にしたり、肥料として販売したりしている自治体もありますが、地域循環を目指し、野菜の生産まで仕組みにしているところは少ないです。

もう一度野菜のこと生産者さんのこと想像してみよう



地産地消――昨今ではこのような言葉もよく聞くようになりました。100年前には「身土不二運動」という言葉も既にあり、身土は人間の体のことで、不二は二つということをさしたようです。この言葉の意味は、人間の体はその人が住んでいる土地や環境と切り離せない関係があり、その土地のものを食べてこそ体が成り立つという考えです。

――土地で出たものを土地で循環させて新たな作物を生み出すこと
――有機野菜で野菜のおいしさを最大限に引き出す生産をすること
――そしてこのことを仕事として成立させること

たい肥

これこそが柳川さんが極めようとしている単純だけど、実現が難しいことなのです。なぜなら、循環型社会は野菜の売り買いだけでは成立しないからです。生ごみを分別する住民、それを回収して堆肥にする行政、その堆肥を用いて野菜をつくる農家、できた野菜を販売する企業、その地域に関わる全ての人が前向きに同じベクトルで動かなければならないからです。この実現に大学卒業後からめざしていますが、まだ実現できていません。それは、循環型社会を目指すほどに、「野菜をつくって売るだけではダメだ」「農家の力だけでは何も変えられない」と強く感じるようになったからです。柳川さんは本当に実直にこのことを想い続けています。決してぶれません。それはこのことこそが人間の生活において、これからの未来を生きる子どもたちにとってすごく大事なことだという想いがあるからです。

農業には政治や土地の問題…ただ野菜をつくる以外にいろいろな社会情勢もからんできます。それらと1つ1つ向き合い、きっと柳川さんは実現していくことでしょう。
それは柳川さんに強い想いがあるからです。農家さんはそれぞれに想いを持たれて、野菜をつくられています。その背景を考えて野菜を食べるときっと違う味を感じられます。野菜を食べるとき、あなたは何を想いますか??

ヤナガワファーム

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